『エピクロスの処方箋』夏川草介
 
 『エピクロスの処方箋』を読みました。

 『スピノザの診察室』の続編となる物語で内科医(雄町哲郎)の物語です。

 スピノザの診察室もとてもいい小説でした。

 マチ先生は大学病院を辞め、京都の病院で診療と訪問診療をする生活を送ります。

 仕事が上手くいってなかったわけではなくむしろ大学から期待されている中で、妹の死による甥っ子の世話のために大学病院を辞める決断をします。

 しかし、大学病院では経験することが出来なかった医療現場に身を置くことでマチ先生は医師としてのあるべき姿と向き合っていきます。

 医療に出来ることは限られている、「それでも」何が出来るのか。

 死を目の前にした患者さんのために何が出来るのか。

 マチ先生が診察に行っている料理店の主人が、長年意識をなくした妻の最後を看取ってくれたマチ先生に話した場面を読みながら涙してしまいました。

 正式な引用ではないんですが、「先生は俺じゃなくて妻を見て話してくれた、今までの先生は俺を見て話してばかりだった。まるで妻がもうそこにいないかのように、俺のほうばかりを見て話していた。」という内容です。

 意識がなくなっても家族にとってはかけがえのない家族です。

 しかし、医師は悪気はなくどうしても話が出来る人に対して話してしまうのだと思います。

 出来ることがないかもしれない「それでも」その人と向き合い続ける、何が出来るのかを考え続けることが出来る人でありたいという思いを感じました。

 この部分は教育にも通じる部分が大いにあるなと感じながら読みました。

 教育に出来ることは限られている、「それでも」教育を信じているし、「それでも」自分が出来ることをやっていくしかない。

 教師が誰かの人生をどうにか出来るなんてことはない「それでも」教師が出来ることを考え続けるしかないと思いました。
 

 

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