『救われてんじゃねえよ』上村裕香

 『救われてんじゃねえよ』を読みました。

 ガツンと殴られる小説でした。

 ヤングケアラーという言葉を聞いた時に多くの人は大変そうだ、苦労している、どんな支援ができるだろうと考えると思います。

 実際、僕もこの小説を読む前はヤングケアラーという言葉に対して家族や親族の介護のために苦労している若者という印象しか持っていませんでした。

 国や政府もヤングケアラーを支援する対象をして説明していることがほとんどです。

 しかし、ヤングケアラーという人はいません。

 それぞれが様々な事情を抱えています。

 親なんだから身内なんだからという暴力的な理由で押しつけられている人、それぞれがそれぞれの関係性の中で過ごしています。

 当事者にしかわかり得ないことがたくさんあります。

 勝手にかわいそうだと同情するのも間違っていますし、何も興味を示さないこともまた違っていると思います。

 作中に出てくる教師が心配し、言葉をかえる場面を見ながら僕もきっと同じような言葉がけをしてしまうんじゃないだろうか、そしてその言葉がけを正しいと思っているんじゃないだろうかと思いました。

 『救われんじゃねえよ』はそんな当たり前なのに多くの人が目をそらしてしまっていることを描いてくれています。

 作者の上村さんは自信の介護経験から悲劇的に描かれることが多いヤングケアラーという枠組みに抵抗するためにあえて喜劇的なものを取り入れた小説にしたと話しています。

 母親の介護でトイレに行く途中に母と床に倒れ込むという状況の中、テレビから聞こえてきた小島よしおの「そんなの関係ねえ」で爆笑してしまう自分。

 寄り添うとは何でしょうか?

 どれだけ心配する言葉をかけてもその人に変わってトイレに連れて行くことは出来ません。

 心配したフリやつもりで自分の役目を果たした気になっていないでしょうか、勝手に自分だけ違う場所で救われていないでしょうか?

 「救われてんじゃねえよ」ぜひ読んでみてください。



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