『ひまわり』新川帆立

 新川帆立さんの『ひまわり』を読みました。

 とてもいい作品でした。

 実話をベースとして書かれている作品ということで、本当に多くの部分で当事者でしか感じることが出来ないであろう言葉があるように思いました。

 最後に紹介されていたリハビリの病院が和歌山県那智勝浦町にある温泉病院ということも知り妙な親近感を感じました。

 物語は33歳で事故に遭い、頸髄を損傷し、四肢麻痺を抱えることになった、ひまりがリハビリを重ね社会に復帰しようとするが、実現できない中で新しい挑戦として弁護士を目指すとういうものです。

 僕はこの小説で働くとは何なのかを問われている気がしました。

 ごく当たり前に働くことを選択し毎日、疑問を持つことなく働いています。

 たまに働くことに不満を持ったりもしますが、
社会の役に立ちたい、誰かの役に立ちたいという気持ちで働いています。

 多くの人がどんな仕事をしようと悩むことはあっても働けるかどうかで悩む人は多くない気がします。

 仕事が辛い、仕事をしたくないという思いで働いている人は多くいると思いますが、働くという選択肢は持っていると思います。

 しかし仕事をする・しないという選択権を持つことに壁がある人がいるということに対して、無自覚だったなと本を読みながら感じました。

 ひまりはリハビリを重ね、電動車いすと音声入力によって社会復帰が出来るんじゃないかという希望を持つんですがその希望は打ち砕かれます。

 働いていた企業の対応にも心を砕かれますが、それ以上に仕事の相談に行った区役所の障害者支援課の対応により絶望を感じる場面が描かれています。

 区役所の担当の人は善意から、社会的な支援が用意されているからゆっくり過ごすという道を提案します。

 働くことを最初から考えてもらえないということは自分は社会にとって必要ではない存在なのかと感じます。

 障害があるということで就労に不利があってはいけないというのは知られていますが、実際には壁が存在しているという事実があると思います。

 実際に障害を抱えている人と一緒に働いている人がどれくらいいるでしょうか。

 後、小説内で出てくる、ロースクールの同級生が本人に言う「障害を持っている人は優遇されていると思っていた」という人も実際にいると思います。

 配慮は特別扱いではないという当たり前のことが受け入れられていない事実がこの小説ではいたるところに出てきます。

 僕が働く学校でもその当たり前を実行出来ていないと感じながら読みました。

 とてもいい小説でした。



IMG_8602