『雫』寺地はるな

 物語はある男女4人の30年間を45歳から15歳までさかのぼっていくという内容です。

 主人公は永瀬珠という女性でリフォームジュエリーのデザイナーとして働いています。

 永瀬が働くビルに同級生でオーナーの高峰、職人の木下しずく、印刷会社勤務の森侑がいるんですが、ビルが老朽化によって壊されるという状況で物語は始まります。

 そこから物語はどんどん遡っていくんですが、男女4人の物語なんですが、恋愛や死といったありそうな展開はありません。

 4人がずっと一緒に成長してきてという展開もありません。

 何かがあるわけではないけれど、それでも繋がっている4人の物語でした。

 キラキラした友情の物語でもなければ壮絶ないじめがある辛く悲しい物語でもありません。

 もちろん物語なので、展開はありますし波はあります。

 それぞれのトラブルに直面した時にお互いがお互いを助け合うんですが、その行動や言葉がとても自然で、仰々しくない。

 それでもすーっと読み続けられることが出来る、そんな小説でした。

 ずっと仲良く一緒にいるだけが友達じゃない、お互いのことを何でも話して何でもわかり合えてるというのが友達ではない。

 友達にはいろんな形があって、正解も不正解もなくて、お互いが友達だよねとか、友達でいようねなんて言葉をかける必要はない。

 ただお互いが見える範囲の距離で、出来ることをしていくという形があってもいいんじゃないか。

 そんなことを感じさせてもらいました。



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