『人魚が逃げた』青山美智子

 青山美智子さんの新作『人魚が逃げた』を読みました。

 銀座の歩行者天国に現れた「人魚が逃げた」と話す王子を名乗る人物をキーパーソンとして全ての小説が繋がっている連作短編集でした。

 読んだ後に気持ちが少し温かくなるいい小説でした。

 強がっている自分、精一杯背伸びしてしまっている自分、無理してしまっている自分。

 そうしないと嫌われてしまう、受け入れてもらえない思っている自分。

 そんなことないんだよ、あなたをあなたのまま受け入れてくれる人も、あなたをあなたのまま大切に思ってくれている人も実はすぐそばにいるよ。

 見えていないんじゃなくて見ようとしていないだけだよ、半径5メートルにいる人をよく見たらきっと大切なものが見つかるよ。

 そんなことを教えてくれる心温まる物語ばかりでした。

 表紙のカバー絵を作成されている田中達也さんが小説内にも登場してくるんですが、田中達也さんファンとしてはなぜか妙に嬉しかったです。

 小説に求めるものが変化している

 最近、選ぶ小説の傾向が明らかに変わってきています。

 心が温まるもの、はっきりした答えを出していないけれど幸せを感じられるもの。

 残りの人生で読める本は限られています。

 出来るだけ読んだ後、幸せを感じられる本を読んでいきたいなと思っています。

 

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