『わたしの知る花』町田そのこ

 町田そのこさんの『わたしの知る花』を読みました。

 町田さんの本は『52ヘルツのクジラたち』『宙ごはん』『夜明けのはざま』『あなたはここにいなくとも』等どの作品もとても好きです。

 今回の『わたしの知る花』もまたとても好きな作品の1つになりました。

 物語はまちに現れた謎の老人を中心として進んでいきます。

 かといって老人目線で進んでいくわけではなく、老人と関わっていく人、過去に関わった人の目線で描かれていきます。

 町田さんの小説を読むたびに、人はどれだけ一緒に過ごしたとしても人のことを理解することはできないんだということを痛感させられます。

 だからといってそれは悲しいことや寂しいことだけではないということも教えてくれます。

 相手がどんな感情で過ごし、何を思っているのか、完全に理解することは絶対にできないということを人はつい忘れてしまいます。

 分かってくれていると勝手に期待したり、分かっているつもりだと勘違いして過ごしている。

 なぜ分かってくれないのか?分かってくれていると思っていたと思って怒ったり悲しんだりする。

 もういいやと人と人は理解し合うことなんて出来ないといって諦めるのではなく、何度も何度でも話すしかないということを伝えてくれます。

 理解し合えないことを受け入れたうえでお互いの関係を作っていくしかないんだということを教えてくれます。

 夫婦であっても親子であっても親友であってもお互いの心の中は分かることがない。

 それぞれのすれ違い、切なすぎる別れ、再会と新しい関係の構築が描かれた1冊でした。

 



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