『働くということ』勅使川原真衣

 『働くということ』を読みました。

 「能力」とはいったい何なのか、なぜ人はここまで「能力」というはっきりしない概念に支配され、「能力」を手に入れないといけないと思い込まされているのかを考えさせられる1冊でした。

 現代社会で過ごしていると、とにかく何かが足りないことがいけないという言葉で溢れています。

 努力していかに「能力」を身につけるか、「能力」を身につけて選ばれる人にならなくてはいけない。

 そんな社会が果たして本当に正しいんでしょうか?

 そんな教育が果たして正しいんでしょうか?と問われている気がしました。

 人と人と働くときに「能力」という目に見えないものにとらわれすぎていないでしょうか。

 あいつはもコミュニケーション力が高くて優秀で使える、あいつは事務処理能力が高いから優秀だ、あいつは仕事が遅くて能力が低い、そうやって人が人を一面だけで判断し選択していく。

 誰もが必死になって能力を身につけ、選ばれる存在になろうとし、疲弊していく。

 そんな「能力主義」をどう脱出していくのかを考え抜き、その先を提示してくれる1冊でした。

 実際にあった話をベースとしたやり取りは参考になることが多く、働くうえで大切なことを学ぶことができます。

 学級経営、学校経営をしていくうえで欠かせない視点がいくつも出てきます。
 
 人はレゴブロックのような存在である。

 本を読み終えて、心に残っていることは何かと考えると「人はレゴブロック」のようなものだという考え方です。

 レゴブロックには様々な色や形のブロックが存在します。

 そのブロックの中で優劣を決めることは可能でしょうか?

 レゴで遊んだことは分かると思いますが、ブロックを作るうえで優劣などはありません。

 様々なブロックとつながりあっていく中で巨大なオブジェや繊細な建造物、生き物が出来上がっていきます。

 同じブロックがある時は船の胴体部分であって、ある時はレンガの一部分、またある時は生き物の手の一部になっていきます。

 人と働くというのはレゴで何かを作るのと同じで、どこかに新しい優秀なブロックなんてものはなく、ブロックをどう組み合わせるか、どこに配置するかが最も大切なになってきます。

 大事なのは選抜することでなく、いかに組み合わせながら生きていくか。

 自分が授業で大切にしていることと通じる部分もおおいにあったので、教育に関わる人はもちろん多くの人に届いて欲しいです。

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