『sprig スプリング』 恩田陸

 読み始めてすぐに「あっこの小説は面白い」と感じることがあります。

 今回、読んだ『sprig スプリング』もそんな小説でした。

 あらすじは引用させてもらいます。
自らの名に無数の季節を抱く無二の舞踊家にして振付家・萬(よろず)春(はる)。
少年は八歳でバレエに出会い、十五歳で海を渡った。同時代に巡り合う、踊る者 作る者 見る者 奏でる者――
それぞれの情熱がぶつかりあい、交錯する中で彼の肖像が浮かび上がっていく。
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。一人の天才をめぐる傑作長編小説。
 バレエ小説なんですが、僕自身はバレエをまったく知らなくて、曲名も白鳥の湖を知っているくらいです。

 実際のバレエを観たことはありません。

 しかし小説内にはいくつもバレエの専門用語やバレエの曲もかなり登場します。

 その都度、止まりそうなものなんですが、どんどんページが進んでいきます。

 なので、バレエをやっている人はさらに楽しく読むことが出来ると思います。

 物語は、萬春を同じバレエ団に入団した同期、小さい頃からずっと見守っていた叔父、作曲家、そして本人というそれぞれの視点で進んでいきます。

 それも読みやすく、面白い理由かもしれません。

 面白い小説を言語化するのは難しい・・・

 面白い小説を読み終わった時って何が面白かったのかを説明するのが難しく、かといって面白いという言葉だけで表現するのも言葉が足りていない気がして歯がゆくなります。

 僕が何が面白かったとか、どこが面白かったというよりとにかく読んでみてほしいんですが、かといってどんな物語なのか、どこが面白かったのかを分からないと読む気にはならない。

 いつも本の書評、紹介をする時につくづく言葉の限界を感じます。

 天才に対する嫉妬を重苦しくなく表現している、多様性という問題を重くなることなく表現し飛び越えていっている、などなどいろんな表現で表現することは出来るんですがそのどれかによって読み方が影響を与えてしまいたくないという気持ちもあります。

 なので、読んでみたいと思った人はぜひ読んでみてください。

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