『汚れた手をそこで拭かないで』芦沢央

 芦沢さんの本を始めて読んだんですが。『汚れた手をそこで拭かないで』は5編の短編ミステリーが詰まったミステリー集でした。

 どの作品もエッジが効いていて、ありえそうな展開や内容で、自分のもとで実際に起きたらゾッとするんだろうなというものばかりでした。

 5作品ともに読み終わった時に喉に魚の小骨が刺さったような嫌な感じが残りました。

 咳き込んでも取れないから、結局ご飯を丸呑みして流し込むしかないみたいな感覚になって読み終わります。
 
 きっとそれは日常生活でふとやってしまう行動やそれくらいは許されるだろうと思ってしまう行動が題材になっているからだと思います。

 例えばゴミ収集場でゴミを集めている時に思わず目を背けたり、避けてしまうことはありませんか?特に悪いことではないかもしれませんが、ゴミを集めている人はどう感じるでしょう。

 自分たちが出したゴミを集めているのを嫌そうに避ける人を見て、ムカッとした気持ちは生まれないでしょうか?

 最初は善意で手伝っていたけれど、いつの間にか手伝うのが当たり前になって感謝されなくなった時、何か雑に扱われている気がしてしまわないでしょうか?

 ちょっとくらい恩恵を受けてもいいんじゃないかと思ってしまわないでしょうか?

 自分のミスを報告しなければいけないと思いつつ、もしバレずに解決する方法があるならその方法を選択してしまわないでしょうか?

 うまくいくか分からないけれど、責任を取るくらいならなんとか上手く誤魔化したいと思う心情は分からなくもない。

 そんなありそうな日常の行動やそこから生まれる感情が思わぬ展開になっていく、意図した方向とはまったく違う方向に進んでいってしまう。

 そんなミステリーでした。

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