『椿の恋文』小川糸

「ツバキ文具店」の続編である『椿ノ恋文』を読みました。

 結婚して子供も生まれ、しばらく休業していた代筆業を再開するところから物語は始まります。

 今回も依頼人のニーズに応えて様々な想いを代筆していきます。

 義理の母親に対して面と向かっていえない想いを伝える手紙、性的マイノリティの自分を認めてくれない毒親に対する想いを伝える手紙など

 今回も手紙という方法を使って人と人を結びつけていく、鳩子さんの奮闘が描かれています。

 人と人は面と向かって言えないことを、文字によって伝えてきたんだなと感じることが出来ました。

 きっと昔の貴族が短歌を書いて送り合ったり、想いを文章にしたのは理由があって、面と向かって言えない想いを伝えるのに適していたんだと思います。

 その方法が今もなお残り続けていることには意味があるんだと思います。

 短歌によって想い人に気持ちを伝え、返歌をもらうということを自然と行っていた人たちは今よりもっと言葉を大切にしていたんだろうなと思います。

 LINEでサラッと送れてしまう告白もいいですが、手紙にして想いを伝える経験をやってみてほしいなと思いました。

 今作の柱となるのも、タイトルにもある恋文です。

 それも主人公の鳩子が代筆したものではなく、先代の恋文です。

 あの先代が恋文を?いったい誰に?

 先代の隠された想いに触れてしまった鳩子は先代の想いと向き合いながら、反抗期を迎えた娘と向き合い、自分自身とも向き合っていきます。

 今作もとてもとても心が温まる作品でした。

 『ツバキ文房具店』を読んでいないと楽しめきれない内容となっているのでまずは『ツバキ文具店』を読むことをお勧めします。


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