『俺ではない炎上』

 浅倉秋成さんが書かれた『俺ではない炎上』を読みました。本屋大賞2022年にノミネートされた
『六人の嘘つきな大学生』で面白いなと思っていたのでつい手にとって読んでみました。
 物語はある日、Twitterで殺人現場の写真が投稿される。フェイクニュースのようにも見える呟きだったが、写真の様子から本当じゃないかという予測が広がりあっという間に拡散。アカウントから本人が特定されあっという間に炎上し、個人情報がネット上にさらされていく。
 特定された本人は会社でそのことを知らされるが、Twitterすらやっていない。しかし誰も自分のことを信じてくれない。デマだと思っていた殺人事件だったが、実際に死体が発見され、ネットだけでなく警察すら自分のことを信じてくれない状況になる。
 いったい誰が?何のために?無実は証明されるのか?それとも・・・

 最後まで犯人が分かりませんでした。小説でしか出来ないトリックも面白く、楽しい小説でした。





 人を人を何で本人だと確信しているのか

 今回の小説で感じたのは、SNSのアカウントが誰のものなのかを判断するのはかなり難しい。というより本当に誰でもなりすますことが出来る可能性があるなということでした。なりすまし被害は後をたたずSNSをしている身としては他人事ではないなと思いました。
 今回のように完全に犯人が計画的になりすましを進めていた場合はなおさら危険だと感じました。自分に置き換えて考えてみても、僕が今つながっているアカウントがその人であるかどうか確信できるかというと確信できません。実際、本人の写真を載せていない投稿ばかりの人もいますし、本人の写真があるからといって本人が投稿しているかは分かりません。
 Aさんのアカウントを誰かが本人の知らないところで長年使っていて認識が深まっていけば、ネット上ではAさんアカウントを投稿している人がAさんとして扱われます。疑われることなく運営していくことは可能です。目的は分かりませんが。

 ネット上では本人を特定する手段はないんだなとあらためて感じた小説でした。

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