騙し絵の牙

 大泉洋さんを最初からモデルとして書かれた小説が実際に映画化されたというあまり聞いたことのない映画を観ました。映画館での公開がコロナの影響で大幅にずれた作品で映画館では観ることが出来なかったのでDVDで観ました。原作とは結構、印象が変わりました。原作では大泉さん役の編集長はかなり苦労をしてうまくいかない、いろんな人に邪魔をされるけれど、最後の最後に実は・・・!!みたいな展開でした。ただ映画ではわりと最初から軽いヒール役というか上手く人を騙して成功していくみたいな流れだったように感じました。個人的には映画も面白かったですが、小説のほうが好きでした。

 小説を脚本にして映像にしていくって本当にどこを削って、どこにポイントを持っていってみたいなやり取りがかなりあるんだろうなと思いました。

 企業がどう生き残るのか

 映画の舞台は歴史ある文芸部門を抱える出版社。文芸部門は変化を拒み昔ながらの方法で再建を目指していく。文学の価値を守り続けなくてはならないと採算を無視した方針を打ち出す。一方で新しく生まれ変わるべきだと主張する役員は文芸部門や赤字を切り捨てていくべきだと主張する。

 うまく文芸部門を切り崩した役員もまた変化を進める新しい人に切り捨てられていく。たった数年、数ヶ月で変化していく時代では変化しないことはリスクでしかない。今いる顧客のニーズに目をむけるとイノベーションのジレンマ通りに崩壊していく。両利きの経営にあるように常に企業内で新しいことを生み出す環境を作り、新しく来た人が既存のものにとらわれない権限を持てるようにしていく。

 映画では最終的にニッチに尖った町の本屋が成功するという流れになっていくんですが、イノベーションのジレンマにある多くの人が分かっていて実行できていないことを映像で観ている気分になりました。

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