幸せや不幸や

 人が生きていく中でこの瞬間は幸せでこの瞬間は不幸で、この期間が楽しくてこの期間は悲しいなんてはっきりと分かれていることはなくて、いつもはっきりしない曖昧な中にいる。それなのに人はいつもはっきりとさせたがる。幸せですが悲しいです。なんて感情を認めない。もっというと人と比較して経済的に恵まれている、家庭環境が整っている人は幸せであると決めつけている。親が仲が悪いと子どもは辛い、障害をもっていると大変だ、幸せそうにしていてもきっと辛いのだろうと決めつける。

 スモールワールズは人の喜怒哀楽がはっきり明確に分かれているものではなく、日々の中で混在してぐちゃぐちゃに詰まっているということを実感させてくれた。どの物語も幸せと不幸は両立しないのか?と問われている気がする。そして幸せと不幸は人の生活の中に両立しているんだと気づく。

 人は闇の部分を持っているし、光の部分も持っているそしてそれが混じった部分も持っている。良い悪いの二つに分けられないものをたくさん持っている。

 6つの物語に登場する人物が抱えるものを人はきっと持っている。そして誰にでもその人にしか物語を持っている。自分の物語が幸せなのか、不幸なのかなんてことは誰にも分からないし、幸せでもあり不幸でもある。

 6つの物語が全て違うテイストなのに、どれもがつながっているように感じる。一穂ミチさんの他の作品も読んでみたい、そう思える物語でした。




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