『あん』という小説を読みました。
 
 ”あん”というタイトルだけでは何のことか分からないと思いますが、どら焼きのあんのことです。過去に罪を犯し、今は世話になったどら焼きやで働いている千太郎とそこにやってきた老女、徳江。徳江が作るあんのおかげで店は少しずつ繁盛していく。しかし徳江は過去にハンセン病にかかっていたことが分かり、客足が遠のき店主からはクビにするように迫られる。ハンセン病は過去の病気で完治していて、うつることもない病気だと証明されている。それでも、店主も世間も明らかに差別する。そしてハンセン病のことを知った千太郎でさえも心のどこかに怖さを感じてしまう。
 しかし、千太郎は徳江に会いに行き、ハンセン病患者の人たちが隔離されていた場所を訪れて、あまりに人権が無視された環境や歴史を知る。
 僕はハンセン病という病名を聞いたことはありましたが、ハンセン病患者の方がどんな扱いを受けてどんな歴史を歩んできたのかをこの小説で初めて知りました。

 差別はあるということを認めることから逃げてはいけない

 差別をなくそう、差別をしてはいけない。多くの人が多くの場所で、さらに長い歴史の中でも言われ続けてきました。差別することはよくないことだ、ほとんどの人がそう思っていると思います。しかしつい最近のコロナ禍においてもコロナ患者に対する差別的な扱いが問題になりました。何度、差別の歴史を繰り返してきても人は差別することをなくすことが出来ていません。
 人は差別をする生き物だから仕方ない。なんてことは当事者になれば絶対に言えません。そして、そんなことで差別を認めたくありません。ただ、自分は差別なんて絶対しないと思っていることはとても危険だと思います。
 差別はある、そして自分の中にもある、と受け入れる必要があると思います。そういう意識を持つことで言動や行動が少しずつ変わるんだと思います。
 自分がかけた言葉や行動を自分の子どもが見ていても出来るのか、自分の大切な人が見ていても誇れる言葉なのか。そういうことを意識することが必要なんだと思います。

 僕もまだまだ出来ていないことだらけですが、そういう心構えだけは持っておかなくてはならないとあらためて感じました。



作者のドリアン助川さんの『あん』を書いた思いが記事になっていたのでリンク貼っておきます。


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