『あなたにオススメの』本谷有希子

 派手な表紙に惹かれて借りた1冊。本谷有希子さんという作家も初だったんですが、芥川賞を受賞されていたり、世界中で翻訳されている作家さんだったみたいです。今回、読んだ本の内容は以下の通りです。

日常は最恐のコンテンツ。世界が注目する作家本谷有希子が描く、心底リアルな近未来!依存症多発時代にどっぷり浸かる人たちへ。
 もう少し補足すると2作の中編小説で構成されている1冊で、幼児教育と防災がテーマの作品。教育は近未来でデジタル技術の進化によって人がますます均質化されていくというテーマ。人が脳内にICチップを埋めたりしていく先に訪れる未来を書いています。
 防災のほうは過剰な危機管理の結果として、安全を選ばない人や準備をしていない人を見下し、自分の安全を最優先する人の姿を描いています。
 どちらもいくらなんでもそれはあり得ないと思うところと、もしかしたあり得てしまうかも。という絶妙の内容を表現しています。もしかした今のまま時代が進むとこんな世界やこんな人が誕生してしまうのでは??と思ってしまう内容が面白さなんだろうなと思います。

 小説は時代を反映する
 
 人間ははるか昔から物語ることを欲していました。星座の物語や日本の神々の物語は遙か昔から今まで語り継がれています。時代、時代に物語は登場し続けています。何百年も残り続けるものもあれば、数年、数ヶ月で消えてしまう物語もあります。過去に書かれたものを読めばその時代の人が何を感じていたのかが分かります。常識といわれるものが、いかに普遍的でないかというのがよく分かります。
 文学と呼ばれるものでなくても10年前のものであっても内容は違っています。人が求めているものや感覚は変わり続けています。だからこそ数十年以上にわたって読み続けられている本には、人間の本質が書かれているんだと思います。
 僕が今、読んでいるものの中で数十年以上、残り続ける小説が何作あるのか。孫の世代の人と語り合える小説はいくつあるのか。少し楽しみです。


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