『熱源』読了!!

 久しぶりに心の芯が揺れる小説でした。実在した人物をベースに描かれる物語。アイヌの人々を中心に進む物語です。日本人とは?と突きつけられた気がしました。日本という国が誕生して日本という国はなくなることなく存在し続けています。ただ日本という場所に関しては時代によって変化しています。日本人は多くの文化を踏みにじり、自分たちの文化を押しつけてきています。そのことに自覚的でないといけないと感じました。
 アイヌの文化を守る、人の文化を人が守ると言えてしまう強者の論理に気づけないといけないと思いました。人が生まれ自分たちが生きていくための道具を作り、生きるために必要な狩りを行い、植物を育てる。ただそれだけの行いをしてきてきた人を、人の積み重ねを守るなんてことを誰がどんな立場で言えるんでしょうか。

 文明が人の文化を滅ぼすことであるならば、文明とは何なんでしょうか?進化なんでしょうか?生き残った生物が優秀で、進化の過程なんでしょうか?生きるためではない搾取や暴力はどんな理由をつけたとしても進化ではない気がします。

 今の社会の中で生きて行くには、どこかに所属していることが強制的に求められます。所属していないと身分を証明されません。ただ、ここでいう身分とは何なんでしょうか?日本はアイヌの人々に和名を強制的に求めました。自分が住んでいた土地から土地への移動にすら制限を求めました。土地をあたかも自分たちのもののように扱う人と、誰の者でもないから大切に壊さないように生きている人のどちらが進化しているんでしょうか。
 文明とは何なのかという問いに、川越さんは第一章でアイヌの集落の村長の言葉でこう語っています。”『馬鹿で弱い奴は死んじまうっていう、思い込みだろうな』”文明によって便利に生きられるようになったのかもしれません。そしてその生活を享受している僕は急に、文明をただ批判することは出来ません。批判したところで、僕は今の生活の中でしか生きることが出来ないからです。進化しているはずの人がどうやって動いてるいるのかまったく分からないものに囲まれ、支えられ生活するしかないという事実に目を向けて生きていくことは必要なんだと思います。

 人生に必読な1冊だったなと思います。

 

 川越宗一さんのインタビュー記事もぜひ読んでほしいです。

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