『山椒魚』井伏鱒二を読んで
 
 国語の教科書に掲載されていることが多い『山椒魚』。内容を覚えている人もいるかもしれないが、ざっくりと説明すると「成長しすぎて自分の棲家である岩屋から出られなくなってしまった山椒魚の、悲嘆をユーモラスに描いた作品」です。
 で、『山椒魚』を読んであらためて思ったんですが、弱みを見せれない、失敗を見せることが出来ない人は大変だなということです。山椒魚は岩屋から出れなくなっているにも関わらず、その事実に目を向けず、外で泳ぐめだかを嘲笑したり、なんとか一人で岩屋から脱出しようと挑戦します。
 人を見下したり、自分一人で解決しようとするばかりで人に助けを求めません。岩屋に入って来た蛙に対しては同じような状況にしてしまいます。

 助けを求めることは実はかなり難しい

 山椒魚の行動は、実に滑稽に見えます。しかし、その姿は人間にかぶって見えてきます。狭い世界から外の世界を見下す。正当な評価をしない。自分より小さな生き物を下に見る。勝手に馬鹿にされることを想像して、自分の状況を素直に言えない。
 当たり前ですが1人では運べない荷物も4人いれば、簡単に運ぶことが出来ます。自分ではどうしようも出来ないことを正直に打ち明けられることは弱さではなく、強さです。
 しかし、多くの人は出来ないことを自己責任だと言って弱さを見せることが難しい環境を作ってしまっています。
 下のイラストの少年の前の子が、自分では運べない荷物の仕事を勢いで引き受けてしまった時、他の三人に「失敗してしまったんだけど、助けて。」と言えるかどうか。最初は恥ずかしいと思っていても、何度か経験していくことで、人はここでは弱さを見せても大丈夫だと思えるようになります。

 幸せに生きる確率を上げる

 そんな集団を作ることで、幸せに生きていける可能性は高くなります。山椒魚も最初に「失敗した!!誰か助けて。」と言えていたら早々に外に出れていたかもしれません。
 出れなくても、話し相手には困らなかったかもしれません。『山椒魚』で失敗や弱さを見せれる強さの大切さを感じました。



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