ミヒャエル・エンデ『モモ』から時間を考える
 
 8月のNHK「100分de名著」で取り上げられた『モモ』から時間とは何なのかを考えていく。
物語のあらすじはホームページから引用する。(https://www.nhk.or.jp/meicho/index.html

主人公は、街の円形劇場の廃墟に住みついた小さな女の子、モモ。彼女の不思議な魅力にひかれて大人も子どももモモの周りに次々と集うようになり、街の人々との間にあたたかな友情が生まれました。ところがある日、「時間貯蓄銀行」から来た灰色の男たちがこの街に現れます。人間の時間を盗んで生きる彼らの詐術によって街の人々は時間の節約を始めました。どんどん冷えきっていく街の大人たちの心。友人たちを助けるためにモモは「時間の国」を訪れます。そこで出会った時間を司るマイスター・ホラと不思議な能力をもった亀・カシオペイアの助けを受けて、モモは灰色の男たちとの戦いを開始します。果たして、モモの運命は?

 時間とは何か
 
 ただ漠然と過ごしているだけなら時間を浪費してしまっている、自分の時間を「見える化」することで効率的に過ごすことができるようになり、時間を節約し、人生のためになる。『モモ』に登場する時間泥棒は人々に時間を効率的に使い節約するようにアドバイスをします。時間泥棒は節約した時間をエネルギーにするのですが時間泥棒のアドバイスは間違っているでしょうか。日本中に溢れていそうなアドバイスではないでしょうか。より効率的に、より生産的に、時間は有限だから不必要な時間を減らしましょう。時短術と検索すれば山のようなサイトや本が出てきます。自分の人生を豊かにするために不必要な時間を削りましょう。

 つながらない空間や時間
 
 現代社会においてつながらない空間や時間は自然にはなかなか生まれない。常にだれかとつながっていることが求められる。人とつながることは大切なことであることは間違いないが、自分の時間を作ることがどんどん難しくなっている。『モモ』の中にも自分の時間という言葉が登場する。じぶんの時間とはじぶんで興味を持ったことに対して考え、行動し、楽しむことで初めて生きた時間になる。人が決めたことに従い、無気力で思考停止して行動しているとじぶんの時間は死んでしまう。じぶんの時間とは効率的である必要はない。心が動いているかどうかなのである。もし心が動いていない人の時間に生きていると、時間泥棒の灰色の男がかかっている「致死的退屈症」という病気にかかってしまう。その前に意図的につながらない空間や時間を作り、じぶんの時間を生きなくてはならないのである。

砂と時計


参考

NHK100分de名著(https://www.nhk.or.jp/meicho/index.html

モモ (岩波少年文庫)
大島 かおり
岩波書店
2017-07-20