社会に開かれた教育課程とは

  中央教育審議会が語る学校の姿

 社会に開かれた教育課程という言葉がここ数年、教育の世界では大切だと言われている。しかし、実際に社会に開かれた教育課程とはどんなものなのか?なぜ必要だとされているのか?何をすればいいかというノウハウではなく「Why」を考えていくことで教育に求められていることを考えていく。
 平成28年度の中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について 」の中で社会に開かれた教育課程について説明されている。

学校を変化する社会の中に位置付け、学校教育の中核となる教育課程について、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていくという「社会に開かれた教育課程」を目指すべき理念として位置付けることとしている。これによって、教職員間、学校段階間、学校と社会との間の相互連携を促し、更に学校種などを越えた初等中等教育全体の姿を描くことを目指すものである。

 社会に開かれた教育課程とは新しく出来た考えなのか

 学校が社会に開かれた存在であるべきだと言われたのは今に始まったことではない。むしろ昔から学校は社会の中に存在するべきだと言われ続けていた。コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を作り、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことを目指してきた。「地域とともにある学校」への道を進んできたはずである。実際に多くの学校が地域の人と協力してさまざまな取組を行っている。『地域協働による高校魅力化ガイド 社会に開かれた学校をつくる』多くの学校が地域と連携している例が紹介されている。どの取組も魅力的なものが多い。

 全員に同じことを求める教育

 素晴らしい取組であるのにも関わらず全国に波及していかないのか。なぜ多くの学校が取り組んでいかないのか。地域と連携するのであれば全員が地域の企業に行って学ばなくてはならない。学校には全員が同じカリキュラムで進まなくてはならないという呪縛がある。例えば地方都市にある学年5クラス程度の学校で考えてみる。1クラス40人とすると生徒数は200名になる。200名を同時期に一斉に地域で学んでくるとするとハードルが上がる。結果、2日程度の誰でも出来る仕事をやって帰って来るだけの学習で終わっていく。教師と地域の方が事前に打ち合わせを行い、事前指導をして挨拶に行き終わった後はアンケート記入し、お礼状を持っていき・・・。全員に同じことをやらせようとすると学校も地域の方もお互いに無難に終わらせようとする。今の学校のシステムはそうなってしまっているのだ。だから地域との連携で進んだ取組をしている学校は小規模校が多くなる。どうすればいいのか。

 全員やるからの脱却

 課題を抱えていて高校生と課題解決をしたいと思っている企業。地域課題を解決してみたい、行動したいと思っている高校生。両者が結びつけばいいのだ。そのために1企業と高校生のチームから動き出せばいい。
 地域の中には高校生と何かをやりたいと考えている企業は多い。アルバイトではなく長期のインターンシップという形で高校生チームが企業に入る。その際にミッションや達成目標、達成報酬の段階から高校生と話し合いを重ねていく。学校や教師が間に入り、段取りするシステムは継続性がない。学年もバラバラのチームで入ることで生徒の間で受け継がれていき文化となる。地域の大人と高校生が教師が知らないところで想像できないことを成し遂げる。そんな未来が社会に開かれた教育課程には求められている。
 

地域社会

 (Sasin TipchaiによるPixabayからの画像)

参考

平成28年度の中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について 」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm