経営の視点は教育に必要か。
 
 学校教員は世間知らず

 「学校の教員は世間知らず」と言われることがある。一般社会に出ることなく教員になる教員が多く、世間の常識とずれているといった認識があるのだろう。実際に教員が世間知らずかどうかという議論は別の機会に置いておくが、私自身も含め多くの教員にかけていると思う視点がある。それは「経営する」という視点である。学級経営という言葉はいまでこそ一般的になってきているが実際に「学級経営」というカリキュラムを学んだ教員は多くない。学校経営となるとその数はかなり減る。
 経営をかなりシンプルに表現すると企業にある「ヒト・モノ・カネ」を運用していくことである。では、なぜ経営の視点が教員にとって必要なのだろうか。

 教職大学院で経営学の本を読み漁って気づいたこと

 大学院に行くようになって読み始めたジャンルが経営学である。ゼミの教授の影響が大きいが経営学の本を読むことで子どもに語る言葉が間違いなく変化する。なぜか。読んできた本を何冊か紹介しながら説明していく。
 最初は『ビジョナリーカンパニー』ジム・コリンズ著から紹介する。「永続」している企業がどんな特徴を持っているのか。「基本的理念」を維持し、組織だけの利益を考えることなく社会のために企業がどんな存在意義を持つのかを考えて実行している企業が生き続ける。自分の学校がどんな理念を掲げているかをすぐに言える教職員は多くいない。自分が勤めている地方自治体の教育の基本理念を採用試験以降でもずっと覚えていて行動している教師は残念ながらほとんどいません。理由は基本的理念を持ち続けることが大切だと実感する場面がほとんどないからである。『ビジョナリーカンパニー』を読むことでなぜ基本的理念を持つことが必要なのかを知ることは教育に大切である。
 次は『非営利組織の経営』P.F.ドラッカー著を紹介していく。『マネジメント』で有名なドラッカーが書いた非営利組織についての本である。ドラッカーは営利組織より非営利組織の運営のほうが困難であると書いている。つまり、学校組織の運営は難しいということだ。非営利組織には利益を出すという目標は設定できません。明確なビジョンを持ち、そのためのミッションを解決し、結果を求めることが必要なのである。学校組織においてボランティアで来てくれている保護者や地域の人に対して結果を求めているところはほとんどありません。手伝ってもらっているという気持ちでいるからである。しかし大切なことはビジョンを提示しミッションを達成することであり、手伝いをしてもらうことではありません。いかにして参加者の成果を評価し持続可能な組織にしていくかを学ぶことは必須といえる。
 たった2冊の紹介ですが経営について学ぶ必要が伝わっただろう。

図書館


 学習指導要領でも経営の力は役に立つ

 新学習指導要領においても経営の知識は役に立つ。学習指導要領にある「社会に開かれた教育課程」は経営の視点なしには達成することが困難である。社会に開かれた教育課程の実現のためには学校と地域社会とを連携させ、協働した教育活動を充実させることが必要とされる。いかに地域の中にある「ヒト・モノ・カネ」を動かしていくかと言い換えることが出来る。地域を大きな組織と捉え、そこにある「ヒト・モノ・カネ」をいかに動かしていくことで地域課題を子どもと大人が協働して解決することが出来るのかを考える力が必要になる。地域の人にとって学校と関わることでどんな利益があるのかを語れるか。短期的な視点だけでなく長期を見越した「基本的理念」を提示することが出来るか。経営の視点を持っていることは教育にとって必須になっていく。


ビジネス書


参考文献

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則
ジム コリンズ;ジェリー ポラス
日経BP
2014-08-29



ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営
P.F.ドラッカー
ダイヤモンド社
2007-01-27



「社会に開かれた教育課程」 文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2020/01/28/20200128_mxt_kouhou02_03.pdf