note ノート 記事見出し画像 アイキャッチ (1)

とある町の物語。ここは町が学校になっている。町が学校ってどういうこと?言葉の通り町のどこで子どもが学んでもいいってこと。

小学4年生の涼太は今日も朝から町へ学びに行く。

「いってきます。今日も醤油店さんに行ってくる。」「車には気を付けてね。」

「おはようございます。」元気に会社にやってきた涼太を気にする人はもういない。すっかり会社に溶け込んでしまった。涼太は今では大豆の良し悪しの選別まで出来てしまう。

週に4日はここに来て職人さんたちとともに過ごしている。この町では校舎に決まった時間に行き、決まった教科を受けるという教育は行われていない。子どもがやることは「町を元気にするために出来ることを考えて行動する」ことだ。そのために学年を関係なく子どもたちは協力し合いながら町で学んでいる。

涼太は生まれた時から町の醤油が大好きだったから小学校に入った時にはすでに醤油のことをそのへんの大人より詳しく知っていた。他にも醤油を好きな子どもがいたので数名でどうやって町を元気にするか、大好きな醤油を発信するか学んでいる。醤油作りは奥が深くて職人さんたちは何百年前の製法を受け継ぎながら常に新しい醤油を作ろうとしている。職人さんの会話を聞いていると理科に関係する言葉がいっぱい出てくる。理科が得意だったんですか?なんて聞くと「理科なんて働くまで習ったことも覚えてなかったよ」なんて話してくれた。

職人さんはみんな涼太みたいな学校がうらやましいよって言ってくる。職人さんが子どものころはやりたいとかやりたくないなんて関係なくとにかくおんなじことをより多く、より早くやることを強制されていたそうだ。今の町ではスピードを競ったり点数を競ったりすることはない。自分のペースで学びたいことを学んでいけるし自分も町の一員なんだって胸をはって思える。

この町の学校にはクラスは存在しない。涼太は醤油のチームの他にもいくつかのチームに入って学んでいる。テストというものも存在していない。一応、校舎は存在していて先生もいる。ただし先生に指示されるなんてことはない。先生に相談することは出来るけど他にも聞く大人はいっぱいいるのであまり先生に質問することはない。でも先生のことは大好きだ。週に何度か今の状況を話に行くといっつも丁寧に聞いてくれるからやる気がどんどん溢れてくる。先生たちもいつも町をどうやって良くしていくか考えていてワクワクしているのが伝わってくる。

涼太のチームはどうやって世界に醤油を発信するかを考えている。そのために英語の勉強を開始している。英語なんて絶対に出来ないと思っていたけど友達と一緒に町にある観光地に来る海外のお客さんの観光案内をしながら学んでいる。最初はスマホに手伝ってもらいながらだった会話が今ではスマホなしでもなんとか意思疎通が出来るようになってきた。コミュニケーションは経験していくとどんどんうまくなるんだって思う。失敗しても誰も笑ったりしないし応援してくれる。

他のチームはこないだ自分たちでネット通販サイトを立ち上げて運営し始めてた。高齢者と協力して趣味クラブを立ち上げて将棋、囲碁なんかを中心に町の人と楽しんでるチームもあった。子どもたちで地元の農家さんと協力して食堂の運営を始めたチームもいた。出来ないなんて考える前にみんな一生懸命、挑戦している。町の人はみんなそんな僕たちを応援して一緒に盛り上げようとしてくれる。

僕はこの町が大好きだ。この町に感謝している。そしてこの町に恩返しをしていこうと思う。